この記事で分かること
- 海外営業人材不足が中小企業の進出を阻む具体的な理由
- 自社採用・商社・BPOの3つのアプローチの比較
- 補助金を使って月3.3万円から海外営業をスタートする方法
「人がいないから海外進出できない」は解決できる
中小企業の経営者に海外進出を阻んでいる最大の理由を聞くと、「人材がいない」という答えが圧倒的に多い。
JETROの調査(2024年版)でも、中小企業が海外展開を躊躇する理由の第1位は「人材の確保が難しい」(回答率67%)だ。
確かに、英語またはASEAN各国語で営業ができる即戦力人材を採用するのは、中小企業にとって簡単ではない。しかし、人材を自社で採用することだけが海外進出の方法ではない。
人材不足を前提とした上で、海外営業を実現する方法は3つある。この記事では、それぞれのメリット・デメリットを正直に比較し、どのパターンがどんな企業に向いているかを整理する。
なぜ海外営業人材の確保がこれほど難しいのか
人材市場の現実
日本国内で「英語または現地語で海外BtoBセールスができる」人材の絶対数は少ない。特に以下の条件を組み合わせると、採用できる人材の母数は急激に下がる。
- 英語またはタイ語・ベトナム語での交渉力
- 海外BtoBセールスの実績(3年以上)
- 中小企業に入社してくれるキャリア志向
このような人材は大手企業・外資系企業にほぼ吸収されており、中小企業が採用するには相応の年収提示と魅力的な事業内容が必要になる。
コストの現実
即戦力の海外営業人材を採用する場合のリアルなコストを確認しておこう。
| コスト項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 年収(海外経験3年以上) | 500〜800万円/年 |
| 採用エージェント費用 | 年収の30〜35%(150〜280万円) |
| 立ち上げ期間(成果なし期間) | 6〜12ヶ月 |
| 研修・教育コスト | 50〜100万円 |
| 初年度合計コスト(概算) | 700〜1,200万円以上 |
さらに採用した人材が「思っていたのと違う」と半年で退職するリスクも考慮すると、中小企業にとって自社採用は高コスト・高リスクの選択肢になる。
3つの解決策:メリット・デメリット比較
解決策①:自社で海外営業人材を採用する
メリット:
- 自社のノウハウ・顧客との関係が社内に蓄積される
- 中長期的には固定費として安定する
- 自社ブランドで直接営業できる
デメリット:
- 採用・研修コストが高い(初年度700〜1,200万円以上)
- 即戦力採用が難しく、育成に12〜18ヶ月かかる
- 退職リスクがある(人材に依存するため、退職すると一気に失速)
- 言語スキル(タイ語・ベトナム語等)を持つ人材の採用はさらに困難
向いている企業:
- すでに海外売上が月300〜500万円を超えており、体制を強化したい
- 5〜10年の長期視点で海外事業を育てる意思がある
- 採用・人材育成にコストをかけられる資金力がある
解決策②:商社・貿易会社を通じて販売する
メリット:
- 自社に海外営業のリソースが全くなくても始められる
- 商社の既存ネットワークを活用できる
- 在庫・輸送・通関を商社が担ってくれるケースがある
デメリット:
- マージンが差し引かれるため、利益率が下がる(商社マージン10〜30%が一般的)
- 顧客との直接関係が築けない(顧客は商社の顧客になってしまう)
- サービス業・SaaS・ITは商社経由での販売が難しい
- 商社側の優先度が低いと、自社製品は後回しにされやすい
向いている企業:
- 物販・製造業で、すでに売れる商品がある
- まず「海外に商品が出ればいい」という段階
- 海外営業への関与を最小限にしたい
解決策③:海外営業をBPO(外注)で代行してもらう
メリット:
- 採用ゼロで即座に営業活動を開始できる(最短2週間)
- 月額固定費として管理しやすく、撤退しやすい
- 現地語対応・現地ネットワーク込みのサービスが多い
- 補助金を活用すれば月3.3万円程度から始められる
デメリット:
- 長期的には自社採用より費用がかさむ可能性がある
- 自社のノウハウ・関係が社内に蓄積されにくい
- サービスの品質はBPO企業の選定に依存する
向いている企業:
- 年商1〜10億円の中小企業で、まず海外市場をテストしたい
- 海外営業の採用・育成にコストをかける余裕がない
- まず「ベトナム・タイで売れるか確認したい」段階
3つの解決策を一目で比較
| 比較項目 | 自社採用 | 商社活用 | BPO活用 |
|---|---|---|---|
| 初期コスト | 700〜1,200万円 | ほぼ0円 | 0円 |
| 月額コスト | 40〜70万円(人件費) | マージン10〜30% | 10〜25万円 |
| 補助金適用後コスト | — | — | 実質3.3〜8万円 |
| 開始までの期間 | 6〜18ヶ月 | 1〜3ヶ月 | 最短2週間 |
| 撤退のしやすさ | 困難(退職コスト発生) | 比較的容易 | 容易(月単位) |
| ノウハウの蓄積 | 高い | 低い | 中程度 |
| 現地語対応 | 採用次第 | 商社が対応 | 対応済み |
| サービス業への対応 | 可能 | 難しい | 可能 |
BPOが中小企業の「最初の一手」に最適な理由
中小企業が海外進出を検討している段階で最も重要な問いは「本当に海外で売れるのか?」という検証だ。
自社採用や商社経由では、この検証に6ヶ月〜1年以上かかり、コストも高い。BPOを使えば、最短2週間で営業活動を開始し、3ヶ月以内に「売れるか・売れないか」の現実的な答えが得られる。
BPOで3ヶ月テスト営業した場合のシミュレーション:
- 月額費用:15万円 × 3ヶ月 = 45万円
- 補助金適用後(2/3補助):実質15万円
- 得られる情報:50〜150社へのアプローチ結果・商談化率・市場の反応
45万円(補助後15万円)の投資で、「このターゲット・このメッセージではASEANのこの市場に刺さらない」という情報が得られれば、それは失敗ではなく成功だ。その情報を元に戦略を修正し、再テストする方が、1,000万円かけて現地法人を作ってから失敗するよりはるかに賢い。
補助金で月3.3万円から始める方法
海外セールスBPOの費用に使える主な補助金は以下の通りだ。
小規模事業者持続化補助金
- 対象:小規模事業者(製造業50名以下、サービス業5名以下等)
- 補助率:2/3(上限50万円〜200万円)
- 活用例:月額15万円 × 12ヶ月 = 年間180万円のBPO費用に適用 → 補助後の実質負担60万円(月5万円)
ものづくり補助金(海外展開枠)
- 対象:製造業・サービス業の中小企業
- 補助率:1/2〜2/3(上限750万〜1,000万円)
- 活用例:海外営業のBPO費用・システム整備費等に適用可能
各都道府県の海外展開支援補助金
- 福岡県・大阪府・愛知県など、独自の海外展開補助金を設けている自治体が多い
- 国の補助金と併用できるケースもあり、実質負担をさらに下げられる
Liteプラン(月額10万円)に持続化補助金を適用した場合のシミュレーション:
- 月額10万円 × 12ヶ月 = 120万円(補助金申請対象額)
- 補助率2/3を適用 → 補助金受給額80万円
- 実質年間負担:40万円(月3.3万円)
「まず3ヶ月試す」という合理的な選択
中小企業が海外進出で失敗する最大の理由は、最初から大きな投資をすることだ。
現地法人設立・駐在員派遣・自社採用——これらはすべて、「本当に売れる」という確信が持てた後にやればいい。
最初の3ヶ月でやることは:
- ターゲット市場を決める(ベトナム・タイ・フィリピンのどれから始めるか)
- 50〜100社へのアプローチを外注する(BPOを使う)
- 反応率・商談化率・「買わない理由」を記録する
- 3ヶ月後に「やるか・やめるか・修正するか」を判断する
この流れであれば、最悪撤退しても損失は数十万円(補助後は実質10万円程度)で済む。
まとめ
海外営業の人材不足は解決できる課題だ。自社採用以外に、商社活用とBPO活用という選択肢がある。
特に「まず海外市場をテストしたい」「採用コストを抑えたい」という中小企業にとって、BPO活用は最も合理的なファーストステップだ。
補助金を活用すれば月3.3万円から始められ、3ヶ月のテスト営業で市場の現実が把握できる。その結果を踏まえてから、自社採用や現地法人設立を判断する——この順番が、失敗リスクを最小化しながら海外進出を実現する正しいアプローチだ。
よくある質問
海外営業ができる人材を採用するにはどのくらいのコストがかかりますか?
英語または現地語で営業ができる即戦力人材の採用には、年収500〜800万円程度の提示が必要なケースが多いです。加えて採用エージェント費用(年収の30〜35%)を加えると、採用費だけで150〜280万円かかります。さらに入社後の研修・立ち上げ期間を考えると、最初の成果が出るまでに12〜18ヶ月かかることも珍しくありません。
商社や貿易会社を通じた海外販売はどのような企業に向いていますか?
すでに確立された商品・製品があり、販路を広げたい製造業に向いています。特に、自社に海外営業のリソースが全くなく、まず商品を海外に出したいという段階の企業には有効です。一方、サービス業・SaaS・IT系の場合は商社経由での販売が難しいケースが多く、直接営業のBPOを活用する方が現実的です。
BPOで海外営業を代行してもらう場合、どのくらいのアポ数が期待できますか?
業種・ターゲット・対象国によって異なりますが、BtoBのテレセールスを中心とした場合、月20〜50社へのアプローチで1〜3件の商談獲得が現実的な目安です。初月は市場調査・リスト作成の比重が高くなりますが、2〜3ヶ月目から成果が安定してくるケースが多いです。
海外セールスBPOに活用できる補助金を教えてください。
中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」(上限50〜200万円、補助率2/3)や「ものづくり補助金」の海外展開枠が主な選択肢です。また各都道府県の海外展開支援補助金も活用できます。月額15万円のプランに持続化補助金を適用した場合、実質負担は月5万円程度になります。具体的な申請サポートについては、無料相談でご案内しています。
BPOと自社採用、どちらが長期的にコストが安いですか?
3年以上の長期で見ると、事業が順調に拡大した場合は自社採用チームの方がコストパフォーマンスが高くなるケースもあります。ただし立ち上げ3年以内の段階では、採用・研修・退職リスクなどを含めると、BPOの方が大幅に低コストです。理想的なのは「まずBPOで市場検証→手応えがあれば自社採用に切り替え」という段階的なアプローチです。